キスするくせに、彼氏じゃない。
校門を出てすぐ、瀬川くんが聞いた。

 

「一ノ瀬先輩と、知り合い?」

 

私は隣を見た。

 

「知ってるの?」

「有名だから」

 

少し意外だった。

人に興味がなさそうに見えても、先輩のことは知っているらしい。

 

「この前、落とした紙を拾っただけ」

「そう」

 

それで終わった。

 

私は借りた本の入った鞄を持ち直した。

 

「優しい人だね」
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