キスするくせに、彼氏じゃない。
図書室を出ると、廊下は暗くなり始めていた。

 

下校時刻までは、まだ少しある。

けれど運動部の声は校庭の奥へ移り、東棟の三階には、ほとんど人がいなかった。

 

瀬川くんが窓の外を見た。

 

「雨」

 

ガラスに、小さな雫がついていた。

私は鞄を開ける。

 

「今日はある」

 

折り畳み傘を見せると、彼が小さく笑った。

 

「よかったな」

「子ども扱いしないで」

「この前の仕返し」

 

覚えていたらしい。

私は傘を鞄へ戻した。
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