キスするくせに、彼氏じゃない。
短い沈黙。

 

遠くで電車の音がした。

 

私はベンチの端を指でなぞった。

 

「瀬川くんは?」

『もう熱ない』

「本、読んでた?」

 

電話の向こうで、小さく笑う気配がした。

 

『少し』

「寝てって言ったのに」

『寝たあと』

 

その返し方がいつもどおりで、口元が緩んだ。
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