元カレの弟(19)と同居することになりました
04:光太という男
改めて光太くんの顔を見ると、やはり陽太だった。口角が思わず上がる。
「大学生だよね」
「はい」
返事をする彼の視線は、私の目よりわずかに上を向いていた。やっべ、お風呂上がりだから眉毛ないじゃん……。気にならないわけじゃないけど、同居する以上はやむを得ない。
「学部は?」
「薬学部です」
「へえ、すごいね。将来は薬剤師か」
「まあそれも選択肢の一つですね」
「ギター弾ける?」
「いや……僕はお兄ちゃんとは違って、楽器はさっぱり」
そう言って苦笑いする様子を見たら、私の口角は下がった。昔の陽太がしてくれたように、Rusty Nailのイントロを弾いてもらおうと思ってたのに。
「じゃあ何が得意なの?」
「ええ……得意なこと、あんまりないですけど……まあ勉強ですかね。ずっと成績いいんで」
それを聞いて、私は今度はぽかんとした顔になった。勉強……? それは高校時代の陽太がこの世で最も毛嫌いしていたものだ。陽太そっくりの顔をした光太くんの口から、勉強が得意などと言われるのは思いもよらないことだった。
どうも、光太くんは陽太ではないらしい。今さらながら、ようやくそのことに気が付いた。とはいえ、顔が陽太であるという点だけでも私にとっては充分な魅力だった。
「じゃあ趣味は?」
「まあ、ゲームと、映画ですかね」
映画。高校生の頃、陽太と二人で流行りのアニメ映画を見に行ったことを思い出し、私の胸の中は温かくなった。
「いいね、映画。いつか一緒に見に行こうよ」
すると、光太くんの目がすっと細くなり、にやりと笑った。
「構いませんけど、僕、語りますよ」
その視線を受けると、心臓がきゅっと絞られるよう違和感に襲われた。それは陽太なら見せることのなかった表情だった。でも、不思議と嫌ではない。私は自分の心臓が動いていることを確認してから言った。
「えっと、語るんだ?」
「ええ、マニアなんで」
相変わらず不敵な笑みを浮かべてそう言い切られた。私は魔法にかけられたように、彼の目元から目が離せなかった。
じゃあ、と言って光太くんはゆっくりと立ち上がった。
「何か見たい映画があったら教えてください。そろそろ行きますね」
そこでようやく魔法が解け、ハッとして応えた。
「ああ、うん」
「おやすみなさい」
「うん。おやすみ」
光太くんはこれまたゆっくりと歩き出した。その背中を視線だけで追う。私の心臓は動いているどころか、耳まで聞こえてくるほどに高鳴っていた。
ふと、床に置き去りにしたドライヤーのことを思い出して振り返る。しかし、それはとっくのとうにママに片付けられていたようだった。
「大学生だよね」
「はい」
返事をする彼の視線は、私の目よりわずかに上を向いていた。やっべ、お風呂上がりだから眉毛ないじゃん……。気にならないわけじゃないけど、同居する以上はやむを得ない。
「学部は?」
「薬学部です」
「へえ、すごいね。将来は薬剤師か」
「まあそれも選択肢の一つですね」
「ギター弾ける?」
「いや……僕はお兄ちゃんとは違って、楽器はさっぱり」
そう言って苦笑いする様子を見たら、私の口角は下がった。昔の陽太がしてくれたように、Rusty Nailのイントロを弾いてもらおうと思ってたのに。
「じゃあ何が得意なの?」
「ええ……得意なこと、あんまりないですけど……まあ勉強ですかね。ずっと成績いいんで」
それを聞いて、私は今度はぽかんとした顔になった。勉強……? それは高校時代の陽太がこの世で最も毛嫌いしていたものだ。陽太そっくりの顔をした光太くんの口から、勉強が得意などと言われるのは思いもよらないことだった。
どうも、光太くんは陽太ではないらしい。今さらながら、ようやくそのことに気が付いた。とはいえ、顔が陽太であるという点だけでも私にとっては充分な魅力だった。
「じゃあ趣味は?」
「まあ、ゲームと、映画ですかね」
映画。高校生の頃、陽太と二人で流行りのアニメ映画を見に行ったことを思い出し、私の胸の中は温かくなった。
「いいね、映画。いつか一緒に見に行こうよ」
すると、光太くんの目がすっと細くなり、にやりと笑った。
「構いませんけど、僕、語りますよ」
その視線を受けると、心臓がきゅっと絞られるよう違和感に襲われた。それは陽太なら見せることのなかった表情だった。でも、不思議と嫌ではない。私は自分の心臓が動いていることを確認してから言った。
「えっと、語るんだ?」
「ええ、マニアなんで」
相変わらず不敵な笑みを浮かべてそう言い切られた。私は魔法にかけられたように、彼の目元から目が離せなかった。
じゃあ、と言って光太くんはゆっくりと立ち上がった。
「何か見たい映画があったら教えてください。そろそろ行きますね」
そこでようやく魔法が解け、ハッとして応えた。
「ああ、うん」
「おやすみなさい」
「うん。おやすみ」
光太くんはこれまたゆっくりと歩き出した。その背中を視線だけで追う。私の心臓は動いているどころか、耳まで聞こえてくるほどに高鳴っていた。
ふと、床に置き去りにしたドライヤーのことを思い出して振り返る。しかし、それはとっくのとうにママに片付けられていたようだった。


