世界で一番切ない恋

ー青春も、恋も、幸せも、後悔ですら、経験しない人生なはずだったのにー


あの日から、私の世界は少しずつ輪郭を失っている。
白い部屋。冷たい空気。
私の手を握りしめながら、
崩れるように泣き叫んでいたお母さんの声が、
今も耳の奥でひりついている。 
頭を金槌で殴られたような衝撃のなか、私はただ、自分の手のひらをじっと見つめることしかできない。
「なんで、私なんだろう……」
誰もいない、夜の学校の屋上。
手すりにすがりつきながら、私は声もなく泣いていた。
見上げた夜空には、ぽつりと一つだけ。
寂しそうに光る一番星が見えた。
「あーあ。先客がいたか」
不意に、後ろから声をかけられた。
驚いて振り返ると、そこにいたのは1人の男子生徒だった。
天体観測の望遠鏡を抱えた彼は、悪戯っぽく微笑んでいる。
その瞬間、心臓が跳ねた。
闇に包まれかけていた私の視界に、
彼が、信じられないくらい眩しく飛び込んできたから。
涙のフィルター越しに見る彼は、
夜空に浮かぶどの星よりも、ずっと輝いて見えたんだ――。
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