世界で一番切ない恋
この新しい学校に来て、大体一ヶ月が経った。
まだ授業の教室移動が分からなかったり、名前と顔が一致しない知らない子も多かったりするけれど、最初の頃に比べればだいぶ慣れてきたと思う。
窓際の席に座っていると、私とは正反対な、清々しくて迷いのない春の風が私の前髪を小さく揺らした。
「みーちゃん! 次、移動教室だよ! 準備早くして〜」
ぼけっと外を眺めていた私の机を、詩織がコツコツと叩く。
「もう、また上の空なんだから」と、わざとらしく少し怒った顔を作りながら言う詩織。だけど、その瞳はやっぱり、いつだって優しさに満ち溢れていた。
「あ……ごめん」
急いで筆記用具を鞄に詰め込んで、先に教室の外へ出た詩織の後を追う。廊下の前の太い柱のところで、詩織は「遅いよー」と笑いながら待っていてくれた。
二人で並んで、少し歩いた時だった。
「――あ、星野くんだ」
詩織がふと足を止め、中庭を見下ろせる大きな窓を指差して、小さく声を上げた。
「星野くん?」
「ほら、A組の星野蓮くん。ちょっと学年でも有名っていうか、変わっててさ。いつも学校に大きな望遠鏡を持ってきて、夜遅くまで屋上で星を見てるんだって。顔はめちゃくちゃカッコいいんだけど、なんか独特のオーラがあって話しかけづらいっていうか……」
「へ〜……モテるの?」
歩きながら、私は興味なさげにテキトーな相槌を打ってみる。
正直、学校の中でチヤホヤされているような、地味にモテるタイプの男子は好きじゃない。
「もちろん! めっちゃモテるよ。他校にもファンがいるらしいもん」
モテる、か。
私にはきっと、一生関係のない世界だ。私には「陰」という暗い言葉が一番お似合い。そんな隅っこにいる女子が、クラスの中心や眩しい世界で生きている男の子なんて……。
きっと、相手によって態度を器用に変えるに決まっている。そういう裏と表がある、調子のいい男なんだろうと、私は勝手に決めつけていた。
「もしかして、少しいいなとか思った? イケメンだよね!みーちゃん、目が釘付けだよ」
詩織がニヤニヤしながら顔を覗き込んできた。その発言に対して、はぁっ? と心の中で激しく呟く。
私はあーゆう、自分が眩しいと自覚しているような男は大っ嫌いだ。それに、私には一生交わることのない、遠い世界の話。
「ぜーんぜんほら、行こう。」
少しイライラしたのを悟られないように、私は無理やりいつもの笑顔をつくった。
……でも、窓の向こうの青空を見上げながら、ほんの少しだけ、胸の奥がチクリと痛んだ。
私だって、一度くらいなら、みんなが言うような『青春』というものをしてみても、よかったのだろうか。
まだ授業の教室移動が分からなかったり、名前と顔が一致しない知らない子も多かったりするけれど、最初の頃に比べればだいぶ慣れてきたと思う。
窓際の席に座っていると、私とは正反対な、清々しくて迷いのない春の風が私の前髪を小さく揺らした。
「みーちゃん! 次、移動教室だよ! 準備早くして〜」
ぼけっと外を眺めていた私の机を、詩織がコツコツと叩く。
「もう、また上の空なんだから」と、わざとらしく少し怒った顔を作りながら言う詩織。だけど、その瞳はやっぱり、いつだって優しさに満ち溢れていた。
「あ……ごめん」
急いで筆記用具を鞄に詰め込んで、先に教室の外へ出た詩織の後を追う。廊下の前の太い柱のところで、詩織は「遅いよー」と笑いながら待っていてくれた。
二人で並んで、少し歩いた時だった。
「――あ、星野くんだ」
詩織がふと足を止め、中庭を見下ろせる大きな窓を指差して、小さく声を上げた。
「星野くん?」
「ほら、A組の星野蓮くん。ちょっと学年でも有名っていうか、変わっててさ。いつも学校に大きな望遠鏡を持ってきて、夜遅くまで屋上で星を見てるんだって。顔はめちゃくちゃカッコいいんだけど、なんか独特のオーラがあって話しかけづらいっていうか……」
「へ〜……モテるの?」
歩きながら、私は興味なさげにテキトーな相槌を打ってみる。
正直、学校の中でチヤホヤされているような、地味にモテるタイプの男子は好きじゃない。
「もちろん! めっちゃモテるよ。他校にもファンがいるらしいもん」
モテる、か。
私にはきっと、一生関係のない世界だ。私には「陰」という暗い言葉が一番お似合い。そんな隅っこにいる女子が、クラスの中心や眩しい世界で生きている男の子なんて……。
きっと、相手によって態度を器用に変えるに決まっている。そういう裏と表がある、調子のいい男なんだろうと、私は勝手に決めつけていた。
「もしかして、少しいいなとか思った? イケメンだよね!みーちゃん、目が釘付けだよ」
詩織がニヤニヤしながら顔を覗き込んできた。その発言に対して、はぁっ? と心の中で激しく呟く。
私はあーゆう、自分が眩しいと自覚しているような男は大っ嫌いだ。それに、私には一生交わることのない、遠い世界の話。
「ぜーんぜんほら、行こう。」
少しイライラしたのを悟られないように、私は無理やりいつもの笑顔をつくった。
……でも、窓の向こうの青空を見上げながら、ほんの少しだけ、胸の奥がチクリと痛んだ。
私だって、一度くらいなら、みんなが言うような『青春』というものをしてみても、よかったのだろうか。