クリスマス*ガーデン
「……私、この歳にもなって、何にも知らないんだなぁって、思って」
私は、冷たいワインを一気に半分飲んで、ため息をついた。体の中が、カァっと熱くなる。
「そう、なんですか?」
「えぇ、ダイヤモンド・ダストも、雪山も、凍傷の直し方も、男の人に触れられるのも、乾パンを食べるのも……」
「えっ?」
「初めてなことばかりで、恥ずかしくなるわ」
落ち込む私に、克己は明るく声をかけてくれる。
「こ、これから、知っていけばいいんじゃないですか? 特に、今言ったのは、専門知識の方が多いし」
試しに、乾パンをまるごと口にしてみる。じんわりとなめていると、軟らかくなっていくのがわかる。
「……お、男の人の方は、彼にこれから教えてもらえばいいじゃないですか?」
私は、ワインを一口飲む。体が、ふわんと揺らいで、ぽかぽかしてくる。
「彼って、親同士が決めた、婚約者なのよ」