青い空の下で
「お前と話すことなんてない。」

そういって,
真人は一方的に電話を切った。
そんな真人の態度は,当たり前だった。

私が,
真人に許してもらえるはずはなかったのに,

一度だけどうしようもなくて電話をかけてしまった。

いつも私の味方でいてくれた真人を,
いつも私を愛していてくれた真人を

裏切ったのは,私なんだから・・



そう,私と真人は,
私が違う人と結婚した時点で終わったんだから。

真人への想いは,
私の心の奥に秘めたまま,
生きていこうと決めたんだから。


そんなことを思いながら,
車は何もない緑の中を走って,
そのまま海沿いの道にでた。

町の中では生ぬるく不快に感じた風も,
海を渡ってくる風は,
すこしだけ私の心にさわやかな風を
送ってくれた。

後ろ座席に腰をかけているモモも,
窓から首をだして,風に耳を流して楽しんでいた。



少しずつざわついていた心も
落ち着きを取り戻しつつあった。

もう真人に会わなくなって,
10年以上も経っているというのに,

私の心の中には
まだ真人が住み続けていることに,

真人を
昔の男の一人として
考えられるようになるのは
いつになるのだろうか。



< 8 / 71 >

この作品をシェア

pagetop