【長編】ホタルの住む森

過去への旅


ホテルにチェックインした陽歌は、荷物を解く気力もなくベッドに突っ伏した。

余りにも色々なことが一度に起こった為、情報処理機能はショートし、放心状態だった。

とりあえずシャワーでも浴びて気持ちを切り替えようとするが、体は鉛のように重く、まったくいう事を利いてくれない。

陽歌は諦めてベットにゴロンと仰向けになると、今日までの出来事を紐解くように思い出し、気持ちを整理していった。


亜里沙からあの場所が隣県だと聞いて、意外にも近かった事に驚いたが、詳しい住所を見て、かつて両親と暮らしたことのある町だった事に更に驚いた。

妙な因縁を感じ、直ぐにでも行かなければいけない衝動に駆られた陽歌はその日のうちに有休を申請した。

そして今日、朝から騒ぎ出す胸を押さえ、特急と普通電車を乗り継いで二時間弱の懐かしい土地へとやって来た。

目的地まではそこからバスで15分だったが、1時間以上の待ち時間があるため、歩くことにした。



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