【長編】ホタルの住む森

Side 晃



――――別れて欲しいの――――



茜の口からこぼれた一番聞きたくなかった言葉。


茜がそう言うだろうとは想像していた。


でも実際に茜の声で耳にすると、こんなにも衝撃的だとは思わなかった。


頭が真っ白になる。


世界から音が消える。


視界に入るのは、ただ薄い桜色の世界。


腕の中の甘やかな香りを放つ愛しい人は、抱きしめれば折れてしまいそうなくらい儚くて…。

桜色の世界に吸い込まれていってしまいそうなくらい危うくて…。


現実にはそこにいないようにさえ思えてしまう。


腕の中から掻き消えて、心はもうここには無いような錯覚を覚えた。


茜、君のいない世界に何の未練があるというんだろう。


君が望むなら僕はいつだって

君と一緒に逝くことを選んであげるのに




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