【長編】ホタルの住む森

晃は喉を迫り上げてくる感情に耐え切れず、その場に崩れ落ち咽び泣いた。

晃のそんな姿を見たのは、茜が死んだ後、たった一度きりだった。

右京がしゃがみこみ震える背を擦ると、晃は無言で右京に手紙を渡した。

右京と共にその内容を見た蒼は、右京に縋り泣き崩れ、彼女を支えるように抱きしめた右京の瞳にも涙が浮かんでいた。

窓から吹き込む風がふわりとカーテンを揺らす。


空を染める夕陽は、茜が去った空を思い出させる色だった。



< 330 / 441 >

この作品をシェア

pagetop