【長編】ホタルの住む森

桜色の便箋


色あせた封筒から出てきたのは、封をしたその時のままの鮮やかな桜色の便箋だった。

16年前、茜がどんな想いを込めてこの封を閉じたのか。

陽歌は手が震えて四つ折の便箋を開くという簡単な動作を上手くできずにいた。

拓巳が陽歌の手首をグッと握る。言葉にしなくても「傍にいるから」と優しい気持ちが伝わってきて、とたんに震えは止まった。

静かに便箋を開き、拓巳がかざす灯りを頼りに二人で文字を追った。

便箋には彼女の性格を表すような角の丸い優しい文字が綺麗に並んでいた。


まるで茜が語りかけるかのように彼女の声が蘇った…。


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