【長編】ホタルの住む森

その瞬間、僕は感じた。


僕らは、出逢うべくして出逢った。


そしてきっと、深く愛し合うことになるだろう。


出逢った瞬間にそんな風に思うなんておかしな話だと思う。

右京が一目惚れしたと聞いたときには、ありえないと笑い飛ばした僕が、運命を感じるなんて。

神様なんて信じたことはなかったし、運命とか生まれ変わりなんてありえないと思っていた。

だけど、僕はこの時、生れ落ちる時に二つに分かれた半身があるのなら

彼女こそまさにそれだと感じていた。

誰が予想しただろう


あの日

あの時

あの瞬間から

僕等があれほど激しい恋に落ちるだなんて…



今でも時々不思議に思うことがある。

あの夜、僕らを導いたものはなんだったのだろうと…

運命の夜、晩夏の風が見せた夢。

それは終わることの無い永遠の恋物語の始まりだった。


もしもこの時、避けられない哀しい運命が、目の前に迫っていると知っていたら…


僕は君を愛することを止められただろうか?



++ 晩夏の夢 Fin ++



< 9 / 441 >

この作品をシェア

pagetop