【長編】ホタルの住む森
その瞬間、僕は感じた。
僕らは、出逢うべくして出逢った。
そしてきっと、深く愛し合うことになるだろう。
出逢った瞬間にそんな風に思うなんておかしな話だと思う。
右京が一目惚れしたと聞いたときには、ありえないと笑い飛ばした僕が、運命を感じるなんて。
神様なんて信じたことはなかったし、運命とか生まれ変わりなんてありえないと思っていた。
だけど、僕はこの時、生れ落ちる時に二つに分かれた半身があるのなら
彼女こそまさにそれだと感じていた。
誰が予想しただろう
あの日
あの時
あの瞬間から
僕等があれほど激しい恋に落ちるだなんて…
今でも時々不思議に思うことがある。
あの夜、僕らを導いたものはなんだったのだろうと…
運命の夜、晩夏の風が見せた夢。
それは終わることの無い永遠の恋物語の始まりだった。
もしもこの時、避けられない哀しい運命が、目の前に迫っていると知っていたら…
僕は君を愛することを止められただろうか?
++ 晩夏の夢 Fin ++