F


私は物心ついた頃から
おばさんに養子なのだということを教えてもらっていた。


血が繋がっていないということで
遠慮したり悩む必要なんてないのだと佐山の家の人たちは言ってくれた。
勿論、まったく悩まない 
なんてのは無理だった。

でも私の居場所はここだ。ここ以外に考えられない。

おばさんもおじさんも
私を本当の娘みたいに思ってくれている。私もそう。

お父さん、お母さんって呼んでしまいそうになるくらい……。

だってふたりはちゃんと私に両親のことを聞かせてくれた。

お父さんとお母さんがどんな人だったか。
まだ赤ん坊の私がどんなに愛されていたか。
どうして亡くなってしまったのかも。

けれど今の話を聞いた限りだと、
おじさんとおばさんは私になにか嘘をついているということになる。


それも、お父さんとお母さんのことで。





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