ハクバの王子
そいつは、同じ制服を着た知らない女だった。

幼さが抜けてない感じがするから、たぶん俺と同い年だろうな。



『なんだあいつ。全速力で。まだ、学校始まるまで1時間以上あるぞ』



俺は思わずその場に立ちつくしたまま、そいつが近づくのを待っていた。


顔が分かるか分からないかぐらいの距離まで近づいたとき、

突然彼女の周りだけ風がビューッと吹いて

桜が舞い上がった。


『スゲー・・・神秘的・・・』



俺は、
まるで桜の雨の中にいるような
彼女に見とれている自分に気づき顔を背けようとした。






けど、





できなかった。




その時
一瞬、彼女と目が合った気がして
数秒
俺はその場を動けなかった。



俺はその時

彼女を見て1年前の“アメ女”を彼女に重ねて見ていた。


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