ハクバの王子
俺はそれ以上突っ込まなかった。
泣きそうだったし
泣かせるの嫌だし。



だから俺はそのまま何も聞かず家に帰ろうとした。

「じゃあ…」

そう言って、今乗って来た電車と反対の電車に乗ろうとした。





グイッ



急に引っ張られて一瞬ぐらついた。



怒鳴ってやろうとして振り返ったら、

綾瀬陽奈子が
俺の制服の裾を掴んで
俺の顔を見上げていた。

「待って…」


その潤んだ瞳には逆らえず、
俺は綾瀬陽奈子の話を聞くことにした。
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