奴のとなり

2.“はじめて”




目の前には、グラスに林檎ジュースが注がれていて、
主に飲まれるその時を待っている。



こうなってみて、
あたしはとことん奴のことを
何も知らなかったのだと思い知った。



奴の家は近い。



でも、場所までは知らない。



奴は何人兄弟で、
どんな家庭なのか。



ましてや、
一人暮らしだなんて思いもしなかった。



たまに休日に出かけるときに
見かけたことのある、深い緑色のアパート。



そこが奴の住処。



場所が分からなすぎて、
散々迷った挙句に迎えに来てもらった。










< 283 / 555 >

この作品をシェア

pagetop