奴のとなり

3.養豚計画

1時間目



保健室



これは決してデートでも密会でもない




「ねぇ、ケイちゃん」



「なぁに?さくちゃん」



まるで子どもを扱うような返しに、あたしはちょっと、ちょっとだけイラっとした



ちょっとだけね



「桃矢くんと離れてた時のこと、知りたい」




「一樹はとっても不幸なのでした・・・・・・・・・終わり」




・・・・・・・・・




さっきからこんなことの繰り返し



昨日、サツキさんとお別れしてから、あたしはケイちゃんに話を聞きたくて仕方なかった



だって、桃矢くんがそんなにたくさん、しかも詳しく話してくれるなんて思えない



桃矢くんなりに詳しく話したって思えても、あたしにはさっぱりなんだろう



だから、身近で身内なケイちゃんを頼ったのに・・・



この扱いっ!!



こんな遣り取りも、かれこれ何十回も繰り返されてる



今日が金曜日だから、明日は休みで会えなくなっちゃう



だから、今日聞き出さないと



「明日、ケイちゃんとデートするって桃矢くんに言うもん」



それまで適当だったケイちゃんの顔が、ばっとこちらを向く



こんな時期に汗なんか掻いてる



「ばっ!!そんなこと言ってみろ、俺がどうなる思ってんねん!!!!
あれか、俺を殺したいんか!?」



うん



言ってくれなきゃね



あたしは静かに頷く



ケイちゃんは盛大な溜息を吐くと、ごろんと寝返りを打った



「朝から『保健室にすんごい色っぽい人がいる!!』ってメールしてきたかと思えば・・・」




俺の扱い上手くなってきとる



そう、ぼそりと呟いた
















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