奴のとなり



翌日、何故だかケイちゃんがそわそわしきっていて



小悪魔さんの顔が怖い



「ねぇ」



「何かしら」



「最近みんな変じゃない?」



「変にもなるでしょ」



「何ででしょ…」



小悪魔さんは盛大にため息を吐き出すと額に手をあてる



ベタな呆れてますポーズ



「こうなったらはっきり聞くけど、一条さん……、妊娠してる?」



「でぇーーーーっ!!!?」



まさかの展開!!



あたしのくだらない便通事情が、赤ちゃん事情に…



どこからそう話が飛ぶのか分からない



驚きを通り越して、昇天しそう



「なんでリンゴから赤ちゃんに!?」



「…リンゴ?とにかく、だからみんなピリピリしてるのよ。避妊くらいきちんとしなさいよね、全く」



「ごめんなさい」



小悪魔さんは小悪魔というよりはお母さんになったみたいに小言を言い続ける



もう授業が始まるというとき、小悪魔さんは苛ついたようにあたしの手を掴み教室を後にした



「じっ授業!!」



「それどころじゃないでしょ」



冷たく言い放たれ、何も反論できなくなった



連れて行かれた先は、懐かしの秘密基地



2人椅子に腰掛け、小悪魔さんはあたしに教室を出るときに持って出たタオルケットを膝にかけてくれた



「小悪魔さん、勘違いしてるみたいだけど、リンゴなの」



「さっきからリンゴリンゴ煩いわね。とにかくお腹の子の話よ」



「だからっ!赤ちゃんじゃなくてリンゴなんだってば!!」



これだけ言うと、さすがに小悪魔さんも何か異変に気づいたのか



一度天井を見上げたかと思うと、一呼吸ゆっくりと息を吐き出しあたしを正面から見つめた



こんな時に思うことじゃないけど、小悪魔さんって綺麗



女同士なのに照れてしまうあたしを、きつく一睨みすると、



「そのリンゴとやらのお話、聞かせてちょうだい」



と、般若オーラで微笑んだ












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