有罪モラトリアム
映画が終わり、デパートの外に出ると、
外はすっかり暗くなっていました。


「そろそろ帰りましょうか。」


あまり聞きたくない言葉でしたが仕方がありません。


「はい・・・。」


駅まで手を繋いでポツポツと歩きました。


「あの、今日はありがとう。」


「ワンピース、デートに着てきて下さいね。」


「はいっ!もちろん。」


乗る電車は全く逆方向です。
彼は私を見送るためにホームまで一緒についてきてくれました。


あぁ、ホームでお別れするのってこれで何度目だろう?

駅はいつも寂しいイメージがする。

彼とお別れの場所だから。


「じゃあ、また。」


「はい、また・・・。」


ホームに鳴り響くベルを疎ましく思いながら、私は彼に手を振りました。



ねぇ。カナタさん。

次に逢えるのはいつなんだろう?

ちゃんと約束しておけばよかった。


だって約束がなければ寂しくて堪らない。

逢いたい気持ちだけが加速していってしまう。

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