有罪モラトリアム

店員の女性は丁寧にラッピングをしてリボンをかけてくれました。


「荷物になるので後で渡しますね。」


「あ、すみません・・・。
 あのっ・・・ありがとです。」


彼はやっぱりニッコリ笑って、荷物を持っていないほうの手で手を繋いでくれました。

その後は昼食を食べて、デパート内に映画館があったので時間の合う映画を観ることにしました。

オレンジジュースとポップコーンを買って席に着きます。


それはベタな恋愛映画で、お話の先が簡単に予想できてしまって…
それでも私は少し感動してしまってコッソリ泣いていました。

男が恋人を亡くすストーリーで悲恋だったから。


泣いてることに気づかれたくなくて、
こっそり彼の方を窺いましたが、
彼は画面に集中していました。


最後のラブシーンで、彼はそっと私の手を握りました。


私は一瞬驚きましたが、

彼の手があったかくて、

今考えてることが一緒だったらいいのに、なんて思っていました。



彼と離れることなんてありえないもん。


ずっと一緒にいてくださいって。


約束したから。


これはただの作り話だから、こんなに悲しい話になっちゃうんだ。


私とカナタさんはずっと一緒にいられる。


それが2人の幸せだから。


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