黄泉還〜yomigaeri〜
第一章 春詩

冬を越して...

第一章 春詩

 【 冬を越して... 】



キーン、コーン カーンコーン

朝8:30。
私は未だに布団の中にいた。
「んン・・うるさいなぁー・・・」

キーン、コーンカーン、コーン

っぱぁ!
「あ、ヤバい! これ、チャイムじゃん!!」
慌てて時計を見ると、もう朝のHRが終わって、しかも最初の授業がはじまったところだ。これは、まずい……
「本当っ!ヤバい・・・ってもんじゃないいか。
 って!そんな突っ込みいれてる場合でもな―――い!!!!」
真新しい制服の袖に手を通し、急ぎながらも鏡で最終チェックして、
誰もいない1階に降りた。

机に上に、置手紙があった。お父さんだ。
『パン食べてネ。父さん、先に行くよ。
 学校初日、頑張って(笑)PS.お弁当は買ってくよ』
「先、行ったんだ。起こしてくれれば、お弁当作ったのに」
トースターのスイッチを入れ、食パンをセット。

私の家は、私と1つ下の弟と10歳離れた妹の3人兄弟と父がいる。
もうこの時間だ。弟は学校へ行ったのだろう。妹も保育園。

・・・母は、妹を産んでからすぐに病気で亡くなった。
病院でお父さんは泣いていた。普段、笑ってばっかで泣き顔一つ見せたこのない父が、幼い妹を抱きしめたままそっと声を出さずに。弟も最後まで母から離れなかった。
当時まだ9歳だった私は、その姿を見て、幼いながらにもこの家族は自分が守るんだ、そう決意した。


チーンッ

「あぁ、こげちゃうこげちゃう。」
ジャムも適当に塗って、口の中に詰め込む。そのままカバンを持って、母の写真の前に立った。
「お母さん、今日も頑張ってくるね!行って来まーすゥ!!」

玄関に鍵をかけて、猛スピードでダッシュ!

私は前いた街から引っ越してきた。
家から学校までは、ざっと10分。もう見えてきた。


この春、あたしは高校生になった。
そして今日から、あたしの人生を大きく変える高校生活が始まったのである。
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