ある雨上がりの日に。
破片
翌朝、奈緒子はあらかじめセットしておいた目覚まし時計によって起こされた。



去年のクリスマスに中島祐樹にプレゼントされたものだった。



「ごめん」ある日突然告げられた。

桜の舞い散る、春の日の午後のことだった。


中島祐樹は新しく好きな人ができた、そういって去っていった。




なにしろ5年も付き合っていたのだから、奈緒子は現状を理解するのにしばし時間をとっ
た。

特に未練もなかった。



奈緒子が愛した男はこれまでに3人いた。

なにしろ初恋が高校に入ってからのことだったから、まだ恋愛経験は浅かった。




奈緒子にとって中島祐樹はそのうちの1人に過ぎなかった。

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