我妻教育
腕時計を見ると、17時を過ぎている。


祭の余韻が残る学院内に、華やかな衣装に身をつつんだ生徒たちが次々と現れ始めた。


後夜祭は、18時スタートだ。


後夜祭は、例年舞踏会が催されている。



我が松葉学院の学生は、将来社交界へ出ていく者も少なくない。


その感性を磨くために、学院は本格的な舞踏会用のホールを所有しており、学院行事として定期的に社交パーティーが催されている。



高等部の学園祭の後夜祭と称した今夜の舞踏会は、一般客も参加可能となっている。


ただし、高等部の生徒主催のパーティーであるため、一般客は、生徒の同伴というかたちでしか参加できない。


聞くところによると、高等部の生徒たちにとっては、後夜祭のパーティーに、自らのパートナーをともなって参加するのが一種のステイタスなのだという。



実質、このパーティーでいう「同伴者」は、暗黙の上では、「恋人」や「婚約者」という意味合いが強く、自らの婚約者を披露したり紹介しあうような場になっている。



つまり、私が未礼の同伴者としてこのパーティーに参加するということは、世間に周知することになる。


私と未礼の婚約を。






舞踏会が行われる会場前には、思い思いに着飾った生徒たちが、開場を待っている。



私は会場前で、未礼を待っていた。



未礼は、亡き母が、結婚式の二次会用に、あつらえたという白いドレスを着ると言っていた。


私は、再び時計を見てため息をついた。
女性は、支度に時間がかかる。



周囲の生徒たちが、私を見て何やら話をしている。

私が、何故ここにいるのか、興味があるのだろう。

私が高等部に出入りしている時点で、生徒たちも、すでに何かしら感じるものはあるだろうが、私と未礼の関係は、まだ友人たちしか知らないのだ。


< 116 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop