我妻教育
「せっかく来たんだから、参加しようよ♪」と、未礼は、のんきに私を誘ったが、ともに参加するという重要性は理解しているのだろうか…。



所詮は、学園祭という生徒たちのお遊びの場だ。


しかし、正式に婚約が決まった訳ではないにもかかわらず、この場で未礼をエスコートすれば、婚約を認めたととらえられることは必至。


今後注目を浴びることはさけられないだろう。


後戻りはできなくなる。



本当に、良いのか…。





「迷っているのですか?」

夕方前、学園祭を見終え、後夜祭には参加しない琴湖とジャンを見送ったときだ。

「迷っているのでしたら、参加するのは、お止めになったほうが、よろしいかと」

私の迷いをさっした琴湖は、そう言った。





「…ここまできて、今さら…」

未礼を待ちながら、頭の中の琴湖の声に、つぶやくように返事をした。


同時に、人混みの中から未礼が現れた。

顔をむけて、思わず目を見開いた。



どれだけ離れていても、大勢の人がいても、すぐに見分けられた。


私は無意識に黙り込んで、目をこらした。



まだ会場に入ったわけでもないのに、すでにスポットライトでも一人占めしているのではないかと錯覚した。


かもし出すのは、まるで真珠のような銀白色の輝き。
人々の心をひいても、寄せつけることはない。


すれ違う人々の称賛のため息。
羨望の眼差しを一身に受け、平静と、微笑みを絶やさずまっすぐ歩んでくる私の婚約者。


その堂々たる高雅さは、比べられるものなどないほど、誇らしい。



・・・-そう。
確かに、この瞬間、迷いは消えていた。




未礼は、私の前まで来ると、プリンセスがあいさつするように、膝丈のドレスの裾をつまんで少し持ち上げた。

「どう?似合う?」

「…ああ。とても」


「エヘヘ、ありがとう」

一転して未礼は、あどけない笑顔になった。





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