我妻教育
私は、2人とともに屋上を出た。

小雨が降り出したようだが、運よくまぬがれたようだ。



帰ったら、未礼と話をしよう。



少しばかり落ちつきを取り戻したように感じた。


常に冷静であらねば、これからを戦い抜けない。



私はしっかりと気をひきしめた。




だが、一足、優留のほうが、早かったのだ。





授業が終わり、帰り支度をしていると、私の携帯に連絡が入った。


桧周だ。

「少し話ができるか?」という内容だった。


いったい何の用だ。

桧周と、個人的な関係などない。
間違いなく未礼に関することだろう。

首をかしげながらも、約束の場に急いだ。


学院内のカフェテリアだ。


「おう。急に呼び出して悪かったな」

人を呼び出しておいて、あとから現れた桧周は、席につきながら詫びた。


「いや、構わぬ。話とはなんだ?」


「あの、スグルって奴のことなんだけどよ…」


刹那、私の顔が硬直した様子を桧周は見逃さなかったようだ。
桧周の顔にも若干緊張が走る。


そして、さらに私の顔が凍りつくような言葉を口にした。

「さっき、未礼のとこに、スグルが現れた」と。

「な!!何だと!?」

机の上に置いた手に力が入り、テーブルが強く揺れた。
波打った紅茶がこぼれる。


「落ちつけ」
私の顔色に反して、平常の表情で桧周は、私をたしなめるように手を前に出した。

私は、周囲に動揺を悟られぬよう、姿勢を正した。

「優留は、未礼に、何をしにきたのだ?」
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