我妻教育
神社を出ると、一台の車が止まっていた。
我が家の車だ。
中から、未礼が出てきた。
未礼は、私の上着を持って駆けてきた。
「来ていたのか」
うなずき未礼は、私に上着をかけた。
「大丈夫?!啓志郎くん、冷えきってるよ」
未礼は、私の背中をさすりながら、車にうながす。
車が、我が家とは逆の方角に走り出した。
不思議に思い、未礼の顔を見ると、未礼は、言い出しにくそうに、しかし意を決し、私に言った。
「啓志郎くんのお母さんが、今日は、家にいないほうがいいって」
「母が…?」
「…うん、お兄さんが誘拐されたこと、報道されて、マスコミが家の前に…」
未礼は、私に気をつかってか、遠慮がちに言ったが、私は冷静だった。
「そうか。ついに、世間にバレたのか…」
「ホテル押さえてるから今日はとりあえず…」
「わかった」
報道されることは時間の問題だと思っていた。
母は、対応に追われていることだろう。
私と未礼を巻きこまぬよう、ホテルを用意してくれたようだ。
ホテルのテレビをつけた。
つけたとたん、目と耳に、兄のニュースが飛びこんできた。
松葉グループの御曹司が、中東で、ボランティア活動中に武装勢力に誘拐された。
現在、国をあげて交渉を続けている。
…願った進展はないようだ。
テレビで、兄の写真が映し出されている。
今の写真ではなく、高校時代の写真だ。
艶のある黒髪で、今よりも、顎が細く(ヒゲもない)、目鼻立ちに少年の面影が残っている。
体つきも今と比べれば細い。
高校時代、イケメンすぎる御曹司として、雑誌やテレビの取材が殺到していた。
兄は取材が嫌いだったらしく、ほとんど受けずにいたようだが。
稀に受けた取材のとき、写されたのであろう写真や映像が流れている。
グリーン☆マイムのホームページにも兄が写っている写真は掲載されていないゆえに、昔の写真が流れているのだろう。
今の写真は、我が家にもない。
我が家の車だ。
中から、未礼が出てきた。
未礼は、私の上着を持って駆けてきた。
「来ていたのか」
うなずき未礼は、私に上着をかけた。
「大丈夫?!啓志郎くん、冷えきってるよ」
未礼は、私の背中をさすりながら、車にうながす。
車が、我が家とは逆の方角に走り出した。
不思議に思い、未礼の顔を見ると、未礼は、言い出しにくそうに、しかし意を決し、私に言った。
「啓志郎くんのお母さんが、今日は、家にいないほうがいいって」
「母が…?」
「…うん、お兄さんが誘拐されたこと、報道されて、マスコミが家の前に…」
未礼は、私に気をつかってか、遠慮がちに言ったが、私は冷静だった。
「そうか。ついに、世間にバレたのか…」
「ホテル押さえてるから今日はとりあえず…」
「わかった」
報道されることは時間の問題だと思っていた。
母は、対応に追われていることだろう。
私と未礼を巻きこまぬよう、ホテルを用意してくれたようだ。
ホテルのテレビをつけた。
つけたとたん、目と耳に、兄のニュースが飛びこんできた。
松葉グループの御曹司が、中東で、ボランティア活動中に武装勢力に誘拐された。
現在、国をあげて交渉を続けている。
…願った進展はないようだ。
テレビで、兄の写真が映し出されている。
今の写真ではなく、高校時代の写真だ。
艶のある黒髪で、今よりも、顎が細く(ヒゲもない)、目鼻立ちに少年の面影が残っている。
体つきも今と比べれば細い。
高校時代、イケメンすぎる御曹司として、雑誌やテレビの取材が殺到していた。
兄は取材が嫌いだったらしく、ほとんど受けずにいたようだが。
稀に受けた取材のとき、写されたのであろう写真や映像が流れている。
グリーン☆マイムのホームページにも兄が写っている写真は掲載されていないゆえに、昔の写真が流れているのだろう。
今の写真は、我が家にもない。