我妻教育
初めて写真で見た時、
その小顔ですらりとした立ち姿から、なぜか不意に、幼い頃姉上達が遊んでいた着せ替え人形(確か和製で、外国の女の名をした)が思い起こされてしまったのだが、
それほど、容姿は非の打ち所がなかった。

身分は、大手商社の社長令嬢。


未礼を私の婚約者にと、この見合い話を持ってきたのは私の祖父だった。


つい先月までは婚約の「こ」の字も聞かされていなかった私としてみれば、いささか急な話ではあった。


私の祖父は、今年の夏に体調を崩し入院したのだが、その際、我が家の先行きを思った末、次期跡取りの婚約を願い、垣津端家に話を持ちかけたのだという。

その意向通り、早急に準備が進められたのである。

 

出席者は、松園寺家からは私と私の両親が、
垣津端家からは未礼と、未礼の祖父、父、そして未礼の弟。

この7名でテーブルを囲んでいる。


私の両親は多忙な仕事の合間をぬうように、一昨日仕事先のNYから帰国したばかりだ。

両親と会うのは夏休み以来であったにもかかわらず、両親は自宅に戻る暇もなく日本での仕事を数件立て続けにこなしたあと、この見合いの席に着いた。


そのようなばたついた状態にもかかわらず、両家とも良い印象で、和やかに話は進んだ。




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