我妻教育
バランスボールといっても、本来それはエクササイズに用いられるもののようだが、エクササイズに使用されているのは見たことがないのだが・・・。

いつもクッション代わりに用いられているそれに、たまたま乗っていたようだ。


慣れないことをするから転倒するのだ、と諭しながら畳をふいたことを
ふと思い出してしまい、情けなさがつのった。



「たまにはそういうこともありますわ。
あまりお気になさいませんように」

琴湖が私の席の横まで歩みよって、励ますように静かに声をかけてきたが返事ができなかった。


気をつわれるのは、どうにも気に食わない。


しつこく喜びをアピールするジャンを尻目に、頭を抱えた。








『いいじゃないか、100点みたいなもんじゃないかp(^O^)q』

『満点と、98点は、たかだか2点差とはいえ大きく違います』


『そうかぁ?(@_@)俺なんて0点に1足して10点にごまかして親父にゲンコツくらったことあるぞ〜(笑)
それに比べたらお前はたいしたもんだ(^^)v☆☆
完璧主義もほどほどにしないと将来ハゲるぞ!!
もっと気楽にいけ♪♪』



口内炎がつぶれて血の味がした。

帰宅後、自室でしばらく父とメールをした。


楽観的すぎる。

ふに落ちない気持ちは、つのる一方で、しかし、なにも言い返せず、父との短いやり取りを終えた。


窓を打ちつける水音で雨が増したのがわかった。

分厚い雲のせいで部屋が暗い。


頭が重くてすっきりしない。

雨の音を聞いていると、しだいに怠さが増してきた。



完璧主義でなくて、どうやって我が家の頂点に立てようか。

こしたんたんと後継者の地位を狙っている者は他にもいる。

完璧でなければならないのだ。
絶対に。
誰よりも。

君臨するのは私。
誰にも渡さぬ。

ここから消えた“誰か”にさえ……





気がついたらあたりは真っ暗になっていた。

時計を見ると19時を過ぎている。

どうやらしばらく眠ってしまっていたようだ。
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