我妻教育
久地梨も、釈屋久も、私も、言葉を失ったように、
全神経を集中し、三津鉢の唇を凝視していた。

思考が…うまく働かない。




「怪しい男だよ、なんつーか、パッカー風っていうか、
でけぇ、ぼろいリュック背負って!きたねぇナリして!」



パッカー…?
…バックパッカー?!



「未礼は、そいつに連れ去られたっていうのか?!」


「知らねーーよ!
そいつ、俺が無理矢理未礼をナンパしようとしたって勘違いして、追い払われちまったから!
あのあと、未礼があいつとどーなったかなんて知らねーよ!」


「…っなっ…」

「その男の特徴をもっと思い出せないか?!」

桧周をさえぎって私は三津鉢にたずねた。


「あんま覚えてねーよ。
80くらいあるガタイいい奴だよ。
すげー黒くて、なんか顔に傷あとがあったぐらいだ」




顔に傷あと…
バックパッカー…





「啓志郎?」

桧周が私の顔をのぞきこんだ。




その時、私の携帯に着信が入った。家の者からだ。


未礼が見つかったという知らせだった。





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