記憶を持つ者
最後に小さく呟いた声は届かなかったらしい。
だが、明るい表情になった刃に、つい笑みを浮かべてしまった。そして、思い出す。


「あ、いい加減起こした方が良いんじゃないか?」


忘れていたわけではないが、今日は大事な日。何故自力で起きられないのかと嘆く刃に、白牙は、ふと思った事を口にした。


「お前がレンと戦うんだろう?だったら…」


「?」


その時に、何故起きられなかったのだろう。

ユイが目を覚ました時には、部屋に他の誰の姿も見つけられなかった。
< 91 / 97 >

この作品をシェア

pagetop