天使のいいなり

●幻の少年

意識が戻った翌日、私は救急病棟から一般病棟へと移った。


一般病棟は開放的で、患者さんのお喋りする声が聞こえて賑やか。
救急病棟はシンと静まり返って、聞こえるのは機械のアラーム音と、忙しく動き回る看護師さんの足音だけ。息がつまりそうだった。



コンコン。

病室のドアがノックされる。
ドアが開くと、そこにはつぐみの顔が。


「里ー緒っ。お見舞いに来たよ。」



つぐみの顔を見ると、ホッとする。


散歩がてら、私とつぐみは中庭へ移動した。
中庭には、他の患者さんたちも数人いて、思い思いの時間を過ごしている。

なんだかココ、少しだけ大学のあの場所に似ている…。



ベンチに座ると、つぐみがカルピスのペットボトルを渡してくれた。

目を合わせ、くすっと笑って、


「「やっぱ夏はカルピスだよねー。」」



2人の声が重なる。


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