愛しいキミへ
「直哉く~ん?親友の俺に隠し事っすか?」
「いや~…隠し事っていうか……耳貸せ。」

言われるがままに直哉の方に耳を近づける。
キョロキョロと辺りを見渡したあと、俺の耳元で直哉はボソッと話す。

「!?今日は桜ちゃんと泊まり!?」
「ばっ!!ばか!!声がでかいよ!!」
「やべっ…悪い。へぇ~それで夜見るDVDを借りに来たと~。」

直哉の言葉を聞いて、思わず叫んでしまった俺。
店内にいた客が不思議そうにこっちを見ているのに気づき、慌てて冷静を装い仕事しているフリ。
少し場所を動いて、DVDの戻し作業をしながら直哉との会話を続けた。

「まぁ~そういうこと…。うちからは少し遠いけど、雅樹に用もあったからこの店に来た。」
「用事?なに?」
「大したことじゃないんだけどさ…バイトって何時までなの?」
「今日は18時だったと思うけど、それがどうかした?」

するとさっきまで赤面して純情少年の顔だった直哉が、会ったときの様にニヤニヤとした顔になった。

「そのあとの予定は?」
「…それ聞く?何も予定はねぇよ。わかってて聞くんじゃねぇよ。」
「念のため確認。予定ないなら、絶対に予定いれんなよ!…じゃあ俺はDVD選んで帰るわ!」

言いたいことだけ言って、俺の前から去ろうとする直哉。
わけがわからない
何で予定を入れちゃダメなんだよ
てか、桜ちゃんとのお泊まり報告をわざわざしにきたってことか?
独り身の俺に対する嫌がらせか!!

「…DVDは桜ちゃんと選んだ方がいいぞ。」
「確かにそうだな♪じゃあ借りないで帰るわ♪バイト頑張れよ!じゃあな~。」

幸せオーラをたっぷりとこの場に残して、直哉は帰っていった。
・・・帰っていったというより、桜ちゃんとの待ち合わせ場所に行ったが正しいか。
直哉に邪魔されたせいで、余裕があったはずの休憩時間になろうとしていた。
しかし、返却作業が終わっていない。
急いで手元にある残りのDVDを棚に戻す。
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