ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】

#02 ダーリン





シン……


ずっと待ってるんだよ………



今度はいつ会えるの………?




シンにただ、そばにいて欲しいだけなのに―――――






―――――誰もいない、オレンジ色に染まる夕暮れ時の海は、どこか愁(うれ)いがあって、人恋しくなる


アタシは砂浜に佇んで、水平線の遥か向こうを眺めていた


砂に“シン”の文字を書くと、嘲笑うかのように直ぐさま波がその文字を浚(さら)って




何もなかったように、真っ更に消してゆく――――




アタシは涙をボロボロと零しながら、一歩、また一歩と、水平線の彼方へ歩き出す




春の海は冷たくて、とても入れるもんじゃないのに、水に浸かる感覚が全然感じられない




踝(くるぶし)…膝…腿(もも)…腰………胸や腕まで海に入っているのに―――――


何も感じない




アタシ、どうしたんだろう?


まさか、死ぬの?


―――――でも、振り返ると、ついさっきまでいた砂浜はもうなくて


あっ―――――!


足を取られて、海中へ―――――


……………誰か………助けて………!!


声が出ない………


浮力に反して、だんだん、身体が鉛みたいに重くなり、沈んでいく


苦しいよ………


どうして…………


まだ死にたくなんかないってば………


シン………




シンに会いたかったよ―――――


………

……




< 544 / 755 >

この作品をシェア

pagetop