ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】




……リ…


………エリ―――――




―――――――!!




「………エリ……?気がついた?」




聞き覚えのある、独特の低声―――――


瞳を開けると霞んで見える、少し下がり気味の目尻に、大きめの口元。


しっかりしたアゴのライン………。


握り締められた左手には、少しずつ温もりが蘇る。


身体が、勝手に反応して涙を作り出す。
かろうじて開いた瞳がまた霞んで、周りが見えなくなっているのに。



「―――――シン………」


シンだけが、ハッキリ見えた。



温い涙が、留めどなく溢れる。


それをシンが、アタシの頬に手を当て、キスで涙を拭う。



―――――ああ、これは夢だ。


さっきとは違う夢なんだ。
映画館でいう“同時上映”ってやつ。


淳子さんと、美味しいお酒にイケメン稲葉さんの創作料理を味わいながら、ぶっちゃけトークしてたのに。


そういえば………今秋からチーフに昇格って言われてたハズ。


もしや、チーフ昇格って話も夢なのかも?


アタシみたいなぺーぺーがチーフなんてなれるわけないし。



いや、もしかしたら夢じゃなくて、死んだ?




「………アタシ………死んじゃったの………?」


そう言うと、アタシの額に、瞼に、頬に。
たくさんのキスを落しながら、シンが答えた。


「何言ってんだよバーカ。エリ、お前ビール飲み過ぎて途中で寝ちまったんだよ」


「………だって、何でココにシンがいるの?アタシは淳子さんと―――――」
「今夜俺も淳子さんに呼ばれたんだよ」

「―――――えっ?」


まだ、頭ン中の回線に電気が通っていないのか、この状況が理解できない。






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