ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】


―――――会場には、既に灯籠を流そうと広瀬川の川辺には沢山の人。

始めは宮沢橋から見下ろしていたケド、しばらく川面を見詰めていたら、灯籠の揺らめく淡い光に導かれるように、川辺へと降りたくなった。


アタシが降りていく間に、少しずつ灯籠が川下へと流れ始めた。
川の流れに身を任せるように、ゆらゆらと灯籠が揺れていく。


亡くなった大切な人への思いを、灯籠に託す。
思いは炎になり、広瀬川を渡って愛しき亡き人へと届けられる―――――。

目には見えないケド、きっとこのそばで亡くなった人の魂は、この炎を感じているってアタシは思うの。


普段はそんな風に考えたコトなんかないのに、オレンジの炎が不思議なキモチにさせる。


―――――あ。
シンのおかーさんとおとーさん。おばーさまも。

アタシからはかろうじて、灯籠流している水嶋家の人達が見えるケド、人だかりで多分アタシには気付かない。

それに、アタシが独りでいたら………。
折角、シンとの初浴衣デートを笑顔で見送ってくれたのに。
カッコつかないっちゃねっ。
ここはバレないよーに………。

そんなもんで、アタシは水嶋家の人たちに見付からないよう、川下の方へと歩いた。


流れる灯籠を横目に、石がゴロつく足元の悪い川辺を歩く。


すると―――――


――――――――――ドン
「キャッ!!」


擦れ違い様、男子高校生らしき3、4人のグループにぶつかり、勢いよく転んでしまった。


「―――っタタタ………ちょっ―――」


周りが薄暗いのと、沢山の人の波。

一言物申そうと振り返ったら、もうそのグループは人並みに紛れて見えなくなっていた。

悔しーっ!!
しかも、さっきの転んだ拍子で、左の下駄の鼻緒が切れてしまった。


「やだ………サイアク………どうしよ………」

アタシを避けるように歩く人たち。
ジロジロとこちらを見ていく。
見世物なんかじゃないんだからっ!


急に寂しいキモチになってきた。

ホントだったら、シンと来ていたのに。
そう考えちゃダメなのにっ。

ヤバ………涙出そ。




「―――――あの………大丈夫ですか?」


背後から、男性がアタシに声をかけた。


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