ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】


流れそうな涙を指で拭う。
アタシは浴衣の裾を気にしながら、ゆっくり立ち上がった。

イタっ!
膝擦りむいたみたい………。
でも思わず、
「大丈………ぶ………」


―――――え………?


何で………?


「……………もしかして………衣理?」

「ノブ………」


―――――いつの間にか、夕闇の濃いブルーに変わっていた残暑の空

幻想的な灯籠の明かりだけの薄暗い広瀬川

賑やかな声、雑踏、宮沢橋を渡る車の音


長い時間、アタシ周りが。
ノブ外何も見えず、何も聞こえなくなった。


「久し振り………。また…逢ったね………」

「ん………」

「それよか、さっき転んだろ?ケガしてんじゃねぇか?」

「あ………」


裾をめくると、左膝から血が滲んでいた。
ヤダ、どうしよ………。
浴衣に付いちゃう………。


「ここ、人通り多いから、あっちの広いとこ行こう」

「でもアタシ………下駄の鼻緒切らしちゃって………」

鼻緒の切れた左側の下駄を持つ方へ、視界を移す。


「――――じゃあ、ココに捕まって」
「えっ?」

そう言ってノブがアタシに背を向けた。

「それじゃあ歩けねぇだろ?ほら、負ぶさるから捕まった捕まった」

躊躇してるアタシの返事を聞かないまま、手首を軽く引かれ、ノブの背に負ぶさられた。


「しっかり捕まれよ」


ノブはアタシ背にし、人並みを掻き分けて広いところへと先へ進んだ。


ノブ………どうしてココに………?

軽くアタシの頭ン中はパニクっていた。


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