ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】


「………確かに水嶋は、真面目で対応も丁寧で仕事はデキるんだが………段取りは悪いし、プライオリティ(※優先順位の事)がまるでなってない。自分がやりたくない仕事を他の職員に丸投げ。自分のミスの尻拭いも他の職員だし。悪い奴ではないんだが、プライドだけは高くて、自分の非を認めないし―――――」


「……………」


「父親が東北大の教授で、母親が茶道家元。今年2月に亡くなった水嶋の母方の父は、元市会議員の議長………東京で就職しようとした水嶋を、父親と祖父が政治的圧力で、会議所に入れさせたからな………可愛い一人息子の為なんだろうが。俺は許せないね」


「………石井ちゃん………随分言うわね」


「そうか?淳ちゃんは知らんだろが、ウチの職員の殆どが言ってる。『自分はデキる』とか、『カッコだけは一人前』のつもりでいるけど、中身はまだまだ子供。診断士試験受けるようになってから余計酷くなったな、自惚れてるつーか………上から目線だし。とにかく、俺もムカつくね」


「………そう。じゃあ、真ちゃんがそんだけ嫌われてるんならば、石井ちゃんたちは、彼が会議所辞めてくれて嬉しいんじゃないの?」



「まぁ………願ってもない事だから、嬉しくないと言ったらウソにはなるが………ただ、『ヘッドハンティングされた』ってのが会員に知れ渡ると、ウチとしてもいい印象は持たれないし………だいいち、退職が急すぎるから、早急に後釜見つけないと水嶋の給与分を県に返還しなきゃいけないし………そっちの尻拭いの事ばっかり考えてるよ」


「………正月明ければ、会議所も3月半ばまで確定申告業務で忙しいしね。嫌な時期に真ちゃんに辞められちゃうんだ………」


淳子さんは、動じるコトなく、落ち着いた口調で石井さんと対話する。

アタシだったら、そんな冷静でいられない。
って言うか………。


シンはどうしてそんな大事なコト、アタシに教えてくれなかったの?


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