ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】


「………水嶋の婚約者だっけ?彼女も可哀相に………水嶋んチの家柄もそうだけど、奴と一緒にいたら振り回されるだけ振り回されて。最初のウチはまだいいだろうけど、長くいると絶対疲れる相手だし?幸せになんかなれないよ。それかよっぽど物好きな婚約者なんだろうな。アハハハハ―――――」


アタシは、石井さんの話を最後まで耳にせず、その場を後にした。


後輩に頼み、スタッフルームからバッグとコートを持って来てもらい、“急に気分が悪くなった…”と、早退した。


今日ランチを一緒に食べた先輩から“顔色悪いけど、大丈夫?”って心配そうな表情でアタシの顔を覗き込む。

アタシは“大丈夫です………淳子さんにはアタシから後でちゃんと話しますが…”と言いかけた後。

“大丈夫。アタシから上手く話すから、早くウチに帰りな”って言ってくれた。


―――――今思えば。
もしかしたら先輩は、アタシが早退する理由を何となく知っていたのかもしれない。


コートとバッグを小脇に抱え、シンと待ち合わせした場所へと走り出す。

一心不乱に、無我夢中に。

シンにただ、逢いたい。
逢いたい。
逢いたい。
逢いたい。


逢って、シンの口から、今のキモチを知りたい。


10年働いてきた会議所を後ひと月足らずで、しかも急に辞めるという事実、理由。

ヘッドハンティングのコト。


そして―――――


アタシに何の相談もしてくれなかった理由………。

アタシでは、シンの力になれないから?


知りたい。
知りたい。
知りたい。


シンのキモチが。
ホントのキモチが、知りたい―――――


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