2LDKのお姫様
『じゃあ、私帰るから』


シオリはゆっくりと微笑み、立ち上がる。


大は玄関まで彼女を見送る。


『お腹、空かしておいてね』


「わかってますよ」


『美味しく、ないかもしれないから……』


あの人からもらった、手作りのモノには負けるるだろうから。


そう言いながら少し暗い表情を浮かべて、彼女は靴をはいた。


「シオリさん、待って」


大はシオリの帰ろうとする手を握る。


そして、ゆっくりと抱き寄せた。


『何……急に』


彼女の体は温かい。


溶けるように柔らかい肌。


「どうせ帰って泣くくらいなら、ここにいてくださいよ。恋人同士なんだから、いつまでも一緒にいられるんだから」


『泣かないわよ……』


そう強がりを言ってはいたが、シオリはしっかりと、大の手を震えながら握り締めていた。





< 76 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop