Magical Moonlight

月の魔力

その日は、満月の夜だった。


あたしは、いつものように、窓際で、彼が帰ってくるのを待っていた。

「彼と一緒にいたい」

そう強く思いながら。

と、満月から、不思議な光が放たれた。

あたしの体が、その光に包まれる。

気付くと、…あたしの前足が、人間の手のように変化していた。

これは…?

後ろ足で立とうとすると、いつものようにうまくいかない。

と、窓に映る人影があった。

…あれ?

いろいろと動いてみる。…
あれれ?

もしかして、…この、美しい女性は、あたし!?

暗い中、部屋の中を歩き回り、鏡を見てみる。

…あたし、だ。

もしかすると、あたしの願いを、月が叶えてくれたのかもしれない。

その時、声が聞こえたような気がした。


『真夜中の鐘が鳴ると、
 元の姿に戻ってしまう。
 それまでに、
 帰ってきなさい』


あたしは、クローゼットの中から、ご主人様の服を取り出すと、それを身に着けた。

…これでいいのかな。ご主人様がいつも着ているようにしたつもりだけど…。


今までの姿が信じられないくらい、あたしの“手足”は、スラッと長かった。

色白で、シャープな顔、ちょっぴり茶色い髪の毛、大きな胸。

ご主人様や道行く人を見ても、こんなに美しい女性は見たことがない。

テレビに出ている人だって、こんなに美しい人は、まれにしかいない。

「この姿なら、彼と一緒にいられる」

あたしはそう思って、家から出た。
< 15 / 36 >

この作品をシェア

pagetop