Magical Moonlight

追いかけっこ

 私が庭に出ると、ネコは勢い良く走り出した。見失わないように、すぐに追いかける。

「ちょ、ちょっと、どこに行くつもりなの?」

 ネコに呼びかける。でも、ネコは何も言わず、ただ走るだけ。私も、必死に追いかける。


 着いた所は、私が通っている中学校。もちろん、夜だから、校門は閉まってる。

 ネコは、校門を乗り越えて、学校の中へと入っていった。

「え?ちょ、ちょっと、待ってよ!」

 校門を乗り越えるわけにはいかなかったので、すぐそばの通用門を開けて、中に入る。

 ネコは、職員用玄関の前で、待っていた。

「あんたはネコだからいいけれど、私にあの校門乗り越えられるわけがないでしょ!うちの学校の門は、よじ登れない形してるんだから!」

 そんなことを言っても、ネコにわかるわけもなく、ネコは首をかしげて、私を見た。

「ミャア」

 ネコは、玄関の扉に手をついた。

「え?ここから中に入るの?鍵かかってるでしょ?」

「ミャ」

 ネコは、首を横に振った。

 半信半疑でドアを引く。と、…開いた。

「え!?ど、どうして…?」

 私は、ネコを見た。ネコは、私の顔を見ると、そしらぬふりして、校舎の中に入って行った。急いで後を追う。

 この校舎、防犯設備が整っているハズなのに、装置は作動しなかった。

 ネコが立ち止まる。

「つかまえたっ!」

 私は、ネコを捕まえて、抱き上げた。

 ネコが立ち止まったのは、職員室の前だった。

 ネコは、職員室のドアへ手を伸ばした。

「中に入りたいの?」

 入っても、大したものはないと思うんだけどな。…あ、明日のテストの問題用紙があったら、見ておきたいかも。

そうだ、明日はテストなんだ。こんな所にいつまでもいるわけにはいかないな。

「ミャア」

ネコが急かすので、とりあえず、職員室のドアを開けた。
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