Magical Moonlight

秘密

 杉峰君とは同じクラスになったことはない。

 でも、かっこよくて、頭が良くて、スポーツも万能の優等生だし、生徒会役員もやっていたので、女子に人気があった。

 私も、ちょっとだけあこがれていたけど、自分には手の届かない存在だと思っていた。


 私たち2人は、それからしばらくの間、何も言わずにただ立っているだけだった。

 どのくらい経っただろうか、杉峰君が、私にこう言ったんだ。

「俺…実は、人に言えない秘密があるんだ。…俺は、満月の光を浴びると、ネコになる。ネコの名前は、アンタレス…」

 彼の左手首には、生まれつき、星の形のアザがある。これが、逃れられない“運命”となってしまったそうだ。そういえば、ネコにも、星の形をした模様があったっけ。

 彼が変身するようになったのは、中学に入ってから。でも、相談できる人もいないから、満月の光は極力避けてきたそうだ。


「でも、どうして、私のところに来たの?私にも、何もできないのに」

 私の問いに、彼は一瞬戸惑った。…答えはこうだった。

「気付いたら、あそこにいたんだ。俺も、どうやってあそこに行ったのか、わからない」
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