Magical Moonlight

もうひとつの姿

 その日、私は、友達の家に行った。

 昨日が卒業式で、今日は友達みんなとパーティーをやったんだ。

 けっこう盛り上がっちゃって、帰りは8時過ぎちゃった。暗いから、早く帰らなくっちゃ。

 ふと、見上げると、空には大きな月が浮いている。今日は満月のようだ。


 満月 ― 何かを思い出しかけた。でも、それが何かわからない。重要なことかもしれないし、そうではないかもしれない。重要なことだったら、思い出さないと…。


「おい、そこのねーちゃん!」

 私は、後ろを向いた。そこにいたのは、1学年上の、「不良」と呼ばれた人たち!暴走族のグループを組んでいるというウワサで、暴力団とも関係があるという話を誰かから聞いたことがある。

 私は、逃げようとした。捕まったら、何されるかわからないもの!

 でも、彼らは、私の周りを取り囲んで、私が逃げ出さないように、腕をつかんできた!

「な、何をするんですか!」

「威勢のいいねーちゃんだな。…どうだい、俺達と遊ばないか?」

「やめてください!」

 私は、腕をつかんでる手を振り払おうとした。でも、相手の方が力は強いし、そこから逃げ出そうとしたところで、多勢に無勢。かなうはずがない。

「悪いようにはしないぜ。ただ、おとなしく俺達に従ってくれればいいだけさ」

 リーダー格の男の手が、私の服へと伸びてきた。

「い…いや!」

 そう叫んだ時!

 前から、見たことのある人が歩いてきた。…杉峰君だ。

 と同時に、忘れていたことを思い出したんだ。
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