ケータイ恋愛小説家
「へ? 恋?」


あたしは目を丸くして驚いた。


「まっ…さかぁ……」


あたしが蓮君に恋してるって?

そんなはずないって。

だってあたしは……


「大輔君。うん、そうだよ。あたし、大輔君が好きなんだもん!」


「大輔って……あの合コンの時のあごひげ?」


うんうんと何度も頷くあたしに対して、綾乃は深くため息をついた。


「そんなの、日向の勘違いだって」


「そっ……そんなことない! あの時、すごくドキドキしたし」


「あれはさぁ……。初めての合コンで舞い上がってただけでしょ?」


「え? 舞い上がってた?」


「そう。インプリンティング……“刷り込み”みたいなもんよ」


インプリ……?

ど……どういう意味よぉ。

綾乃は時々難しいことを言う。

そして、あたしの疑問に気づいたのか、小さな子供に説明するかのようにゆっくり話してくれた。


「ヒナ鳥と一緒。産まれて……一番初めに目にした物を親だと思ってしまうってヤツ」


「一番初め……?」


「そ。初めての合コンで優しい声をかけてもらって……ちやほやされて、それで舞い上がっちゃったんだよ」


うっ……。

たしかに、それはそうかも。


「日向はさ。そのドキドキを恋だと勝手に勘違いしちゃってんの」


「で……でも」
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