ケータイ恋愛小説家
いきなりあたしの右手首を掴む。


「振りほどいてみ?」


すぐ側で低い声がする。

その声に揺さぶられた心臓がドクンッと音を立てた。



蓮君は挑戦的な目であたしをじっと見てる。

あたしはその目を直視することができず、ただ下を向いて自分の腕を回したりひっぱったりしようと試みるものの、全く動かすことすら叶わない。

一方、蓮君の方はどう見てもそれほど力を込めている感じではないのに……。

二人の腕の違いに驚かされる。

蓮君の腕はとても細く見えるのに、比べてみるとあたしなんかよりずっと太い。

筋肉のラインがはっきりとわかる腕には血管が浮き出ている。

こんな場所でも男と女では全く違うんだ……。


あたしはなんとか腕をふりほどこうと、空いている左手を蓮君の腕に掛けようと思い、手を伸ばした。

だけど、逆にその左腕まで逆手に取られてしまった。

両手の自由を奪われたあたしは成す術がない。

そのまま蓮君に体重を掛けられ、背後にあったベッドの側面に完全にもたれかかるような形になってしまった。



「ほら? 抵抗してみって?」


蓮君は片方の口角を上げて、さっきよりさらに挑発的な目で見つめる。


な……

なんで……?
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