秘密の片思い
水切り籠に最後のお皿一枚を丁寧に置く。


濡れた手をタオルで拭いていると後ろから腕が回る。


「い、郁斗」

不意に抱きしめられて驚くと共に心臓が跳ね上がった。



「ずっとこうしたいって思っていたんだ」

背中に郁斗の体温を感じ、耳元で囁かれると足に力が入らなくなる。


「ほ、本当に?きゃっ!」

愛は軽々と抱き上げられた。


「郁斗っ、重いから降ろしてよっ」


「重くなんかないさ むしろ身長の割には軽くないか?」


愛の身長は165センチ ヒールを履くと170センチと高い。


「か、軽くないよ」


「いいから 黙ってろよ」


そう言いながらどんどん歩いてしまう郁斗に愛は黙るしかなかった。





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