死言数
「あのすみません。」
明菜は声をかけた。
しかし、目の前にいるフードを被った人物は何も言わない。このフードに明菜は見覚えがあった。
「あっ。」
いつかの電車の中での視線。あの時のフードと同じだ。恐怖を感じ、ドアを閉じようとした。
「あ、なんでもないです。勘違いです。気にしないでください。」
勢いよくドアを閉じようとした時だ。フードを被った人物が、そのドアを強引にこじ開けた。
「ひっ。」
目に涙を浮かべ、声が出ない。
<た、助けて・・・。>
誰でもいい。とにかく、助けを請いたかった。しかし、それより先に明菜の口は押さえられ、そのまま部屋に押し込まれてしまった。
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