いちえ



「んじゃーなあ!!次はるぅの実家行く時な〜!!」


「気を付けてな〜」



部屋を瑠衣斗と出る時に、龍雅と宗太にそう声を掛けられ、振り返った。


手には相変わらずゲームを持っていて、女っ気も感じさせない様だ。


「うん、んじゃね〜」


「まじで来るか……」



ポツリと言いながら背を向けた瑠衣斗は、まだ諦めのつかない様子だ。



何でそこまで嫌がるんだろ?



なんて思いながらも、先に部屋を出てしまった瑠衣斗に続いて、軽く手を振りながら部屋を後にした。



むっとまとわりつくような、湿気を帯びた空気に、着ている衣服が熱くなったように感じる。



じっとしていても吹き出してくるような暑さが、不快感を最大値まで引き上げる。



「ねえ、るぅ」


「ん〜?」



玄関までのフローリングの廊下を、瑠衣斗と並んで歩いている。


私の問いかけに、のんびりとした返事を返した瑠衣斗は、前をダルそうに見ながらも、私に視線を向けた。



サラサラの髪の間から、瑠衣斗の綺麗な色素の薄い瞳が覗いている。


じっと見ていても飽きないような綺麗な瞳は、全てのモノを吸い込んでしまいそうだ。



「楽しみじゃないの?」


「……えっ…」


「家帰るの。楽しみじゃないの?」



久しぶりに長居する訳だし、それに何より、家族全員と揃う事も久々だろう。


おまけが沢山付いてきちゃって、だいぶ恐縮だけど………。



「ん〜…ま、何だかんだ楽しみにはしてる」



言いながら、ふわりと笑った瑠衣斗に、胸がギュッと音をたてた。
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