いちえ
いそいそと車に乗り直し、再び車が走り出した。
やっぱり後ろでは龍雅が宗太に絡んでいて、そんな様子に瑠衣斗が前を向いたままヤジを飛ばす。
いつもの事だから何とも思わないけれど、心なしか楽しく思える。
それはきっと、瑠衣斗と慶兄の実家へとお邪魔すると言う事に、胸が高鳴っているからだろう。
るぅのご両親って、どんな感じの人達なんだろう。
慶兄とるぅって似てるし、他の兄弟とも似てるんだろうなぁ。
「なぁなぁ〜、女の子誰か紹介しろよー!!」
「だぁーから、今こっち居るかも分かんねーって」
いまだに瑠衣斗に根気よくしがみつく龍雅に、やっぱり呆れるけども。
「徘徊でもしてろよ」
「そうだな〜…って俺変質者みてーじゃん!!」
ある意味宗太の言う事に、本気でしかねないな……なんて思ったが何も言わないでおく。
龍雅に変に絡まれても、体力を消耗するだけだし。
ふと軽い重力がかかり、車は徐行へとスピードを落とした。
ずっと走ってきて、更に眠っていたせいもあり、いつの間にか高速は降りていたらしい。
山道を走っていたせいか、いまいち私には高速なのか普通の道なのか区別がつかなかった。
木々が開けた道は、山道を下りきったらしく、信号機が赤く光っていた。
「はぁ…あとちょっとで着いちまう」
「やっとかぁ〜!!疲れちまったぜ!!」
「俺とるぅは運転したけど…龍雅は騒いでただけだろ」
うん。確かに。
って、私も同じような物だけど。